• 【私たちのサスティナブル Vol.6】ファッションで社会課題の解決を目指す 西側 愛弓さん
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【私たちのサスティナブル Vol.6】ファッションで社会課題の解決を目指す 西側 愛弓さん

リユースアイテムを活用して賢くオシャレになる方法をご紹介しているKÓMERUでは、サスティナブルなライフスタイルに注目しています。今回は、NPO法人「DEAR ME」代表理事であり、「株式会社coxco」代表も務める西側 愛弓さんにお話を伺いました。

すべての人に夢とファッションを!

西側さんが学生時代に立ち上げたNPO法人「DEAR ME」では、どのような活動をされているのですか?

西側さんのDEAR MEが主催するファッションショーの様子

フィリピンのパヤタスという貧困地域で暮らしている子ども達がモデルになるファッションショーを開催しています!2015年8月に活動をスタートしてから約5年が経ちましたが、立ち上げ当初から年に数回フィリピンに渡航して、子ども達に「ランウェイを歩く」という経験を提供しているんです。ファッションショー自体は1年に1回の頻度で行っています。

団体名である「DEAR ME」には、自分自身と向き合うことや自分の将来を考えるプロジェクトにしたいという思いを込めています。

現在、NPO法人は私が、学生支部は大学生が代表を努めており、InstagramをはじめとしたSNSを見て集まった全国の大学生も参加してくれています。

「DEAR ME」では、ファッションショーの準備をする傍ら、企業と連携してミレニアル・Z世代にサスティナブルなライフスタイルを発信する活動をしているんです。数年前までは「貧困」のみをテーマにフィリピンでファッションショーの開催をしていたのですが、活動していくうちに貧困問題は労働環境などさまざまな社会問題と繋がっていることに気がつきました。そこから貧困だけでなく環境問題や労働問題にも着手し、「ファッションでサスティナブルな未来をつくる」というビジョンを掲げています。

NPO法人の活動というと生活に直結する食事・医療・住居の支援が多いですが、あえて「ファッション」を切り口に活動を始めたのはなぜですか?

西側さんのDEAR MEが主催するファッションショーでドレスを着て並ぶ女の子達

ファッションが私に、夢に生きるきっかけをくれたからです。

私は昔から勉強もスポーツも興味がなく、夢ややりたいこともありませんでした。ファッションだけは唯一好きだったんですけどね。

そんな私を大きく変えてくれたのが、学生時代に思い切ってチャレンジした、世界を回りながらファッション雑誌をつくる活動で。雑誌を作り上げたとき、自分のような人間でもやり遂げられたという実感がすごく自信になったんです。だからこそ、自分を変えてくれた「ファッション」を通して他の人や社会を幸せにしたい。そんな思いからこの活動をスタートさせました。

でも、この活動を始める時、いくつかの団体に協力を求めた時に「貧困にファッションはいりません」と言われてしまったんです。ファッションは衣食住という人間の基本になるものの一つなのに、貧困にはファッションが不要だとなぜ決めつけられてしまうのだろうと、疑問を抱きました。

「日々生きる」という観点からすると、衣食住の中で「衣」は一番重要度は低いかもしれない。だから「貧困」という課題において、ファッションは後回しだと考えられてしまうことも理解は出来ます。だけど、「貧困にファッションはいらない」という考えにはどうしても賛同出来なかった。

だから、ファッションを軸に活動している団体が少なかったからこそ、私はこの領域で社会課題に取り組む活動を始めようと思いました。

なぜ以前から「ファッション」に対する情熱があったのですか?

西側さんとカゴや扇子を持った女性達

ファッションが持つエネルギーに惹かれるからです。ファッションは毎日に彩りを与えてくれるもの。それに亡くなった祖父がとてもおしゃれな人だったこともあり、その影響も大きいです。

過去の「DEAR ME」の活動で、特に思い出に残っているエピソードを教えてください。

西側さんのDEAR MEが主催するファッションショーの様子

毎回とってもメモリアルなのですが、2015年8月に開催した一番最初のファッションショーが特に心に残っています。
この時、周の人から「貧困にファッションは必要ない」と言われることが多かったので、ファッションショーの準備を進めながらも自分のしていることが本当に正しいのか自信が持てず悩んでいたんです。でも、ファッションショーの後に子ども達が私に駆け寄って来てくれて、「次はいつやるの?」「人生で一番楽しかった!」と言ってくれて。ファッションで子ども達に夢を届けたいという思いが通じたと実感できて、感動しました。

その後も定期的にファッションショーを開催し、2020年2月に開催した7回目のショーでは35人の子ども達が参加してくれました。開催地のパヤタスでは、DEAR MEのファッションショーに出るのがステータスになっているそうで、とても嬉しいです!

「DEAR ME」の活動から見えてきた、次の課題

ファッションショーを経験した子ども達にはどのような変化がありましたか?

フィリピンのパヤタスでDEAR MEが開催したファッションショーに出演した女の子

ランウェイを歩いた経験を通して、自分の夢を描いて、夢に向けて努力する子どもが出てきてくれるようになりました。例えば、フライトアテンダントになりたいと言っていた子は、将来に向けて英語の勉強を頑張っています。

でも、子どもたちの変化から見えてきた課題もあって。

フィリピンの貧困地域の現状では、目標を持って努力できる環境が十分整っているとはいえません。特にパヤタスでは、交通費が払えず学校にいけない子やテストを受けるための紙代が払えないために、努力しても報われない現状がある。それを支援する制度やその子達が将来就職できる先も多くはなく、それどころか、貧富の差や出身地によって差別を受けてしまうこともあります。

この現状を目の当たりにしたとき、「夢を叶えるための努力の過程をサポートすることが、子ども達の可能性を広げることになる」と感じました。

だからこそファッションスクール「coxco Lab」を立ち上げるのですね。どんな活動をされる予定なのか教えてください。

西側さんが代表の「株式会社coxco」のポスター

ファッションショーで夢が出来た子ども達が、次は夢に向かって努力できる環境を作るために、ファッションスクール「coxco Lab(ココラボ)」をマニラで設立する予定です。ファッションや美容の分野に関して、無償でスキルを提供します。

「coxco Lab」を通して努力が報われる社会の実現に少しずつ貢献していきたいと思っています。

美容分野での学びのチャンスを提供しているということですが、なぜその分野を選ばれたのですか?

西側さんのDEAR MEが主催するファッションショーの様子

ファッションと美容は切っても切り離せないですし、また、フィリピンは自己表現をするのが好きな国民性であるため、近年美容領域が盛り上がっています。経済成長の影響からも中間所得層が増え、美容領域の事業が伸びている背景もありますね。

また、最近「株式会社coxco」を立ち上げられたんだとか。こちらはどのような事業をされるのですか?

「株式会社coxco」はファッションを通して社会課題の解決を目指したいという願いから立ち上げた会社で、サスティナブルなファッショッンブランド「coxco」を運営しています。社名とブランド名の「coxco」は、「Cocreation(共創)」と「Communication(意思疎通)」を掛け合わせています。社会課題は一人で解決できるものでないからこそ、多くの方を巻き込んで、共に解決を目指して向き合っていきたいと考えています。

将来、ファッションスクール「coxco Lab」で学んだ子ども達を、ブランド「coxco」で雇用することも目指して行きたいと思っています。

サスティナブルな環境のためにできること

西側さんが今、一番問題視されていることは何ですか?

フィリピンのパヤタスの子どもたち

環境破壊や労働搾取など様々な問題がありますが、それぞれの"問題が分断されている"ことが問題ではないかと思います。労働搾取によって貧困問題が生じ、貧困から十分に教育を受けることが出来ず、無知によって環境破壊が進行する。このように複数の問題が繋がっているのに、個々の課題だけが取り上げられてしまうことが多いと思うんです。

例えばフィリピンのローカル地域ではゴミのポイ捨てが多く、排水口が詰まって道が水没してしまうことが多々あります。そのせいで、少しの大雨で洪水のようになることもあるくらいです。自分の行いがどのような環境問題に繋がるのかということや、いつかは自分に跳ね返ってくることを誰も教えてくれないから人々は無意識に道端にゴミを捨ててしまう。

根本的な環境問題の解決を目指すのであれば、点ではなく、線で環境問題を捉える取り組みが必要だと感じます。

西側さんが注目するファッション業界では、大量廃棄などの問題が叫ばれています。「消費者」と「アパレル企業」は、環境問題などを解決するために何ができるでしょうか?

coxcoの事務所の様子

消費者ができるのは、地球環境やファッション産業の現状を知ることだと考えています。無知や無意識によって、社会課題の深刻化に自分自身も加担してしまうことがあると思うので、まずは学ぶことを大切にしたい。ファッションは、ただ単にトレンドや周りに流されて楽しむのではなく、自分のスタイルを築くことも重要だと思います。

企業ができるのは、つくる責任とつくった後の責任を取ること。大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルを業界全体で見直し、アクションチェンジしていくことが重要でないかと考えています。

「サスティナブル」という言葉にはさまざまな解釈がありますが、西側さんが考える「サスティナブル」とはどのようなものですか?

西側さんのDEAR MEが主催するファッションショーの様子

「未来を共につくる決意表明」だと思います。

サスティナブルな環境をつくるには、共に手を取り合って挑戦していくことが大切で、独りよがりでは何も生まれません。自分の経験からも一人では何もできないということを「DEAR ME」の活動を通して痛感しました。何も持っていなかった私に周りの人が手を差し伸べてくれたからこそ、今の自分がある。だからこそ、全人類が手を取り合っていかなければ環境は変わらないと思っています。

西側 愛弓
大学時代に、フィリピンのスラム街で暮らす子ども達がモデルのファッションショーを開催するNPO法人「DEAR ME」を設立。某大手IT系企業に務めた後、「株式会社coxco」を立ち上げ、ファッションで社会課題の解決を目指す。

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